高嶺の花(シャクナゲ)

 日本では、深山の岩場や尾根筋に生育するシャクナゲは、古来から「神に捧げる木」「忌み木」として神棚に捧げる神聖な木と考えられていました。

 憧れの人、手の届かない存在のことを「高嶺の花」と言いますが、この言葉はシャクナゲの花から来た言葉なのだそうです。深い山の中で鮮やかな色で目を引くシャクナゲは、日常生活している土地では育たない高山植物だったために「高嶺の花」と呼ばれてきたようです。

 シャクナゲは、漢字では、「石南花」「石楠花」と書かれますが、漢方薬として用いられる「石南葉」「石楠葉」は、バラ科のオオカナメモチという植物のことで、シャクナゲのことではありません。どうやら漢字表記が、誤って伝わったようです。

 しかし、漢方のネットを見ていると「石南葉」は、シャクナゲ類の葉のことだとして、「利尿薬として浮腫やリウマチ、痛風の治療に茶として用いている。」とされているものも見受けられます。シャクナゲの葉には、痙攣性の有毒物質があり、中毒量では嘔吐、痙攣、麻痺をおこし、昏睡から死に至ることもあるといいますから、まさに「さじ加減」。毒も使いようによっては薬となるというのかも知れません。

 さて、「高嶺の花」のシャクナゲですが、ヒマラヤや中国の山奥に咲いていた野生種のシャクナゲが、宣教師などによって海を渡り、ヨーロッパに伝わります。そのアジア原産の種と欧米原産の種との交配によって作り出された園芸品種がセイヨウシャクナゲです。

 現在一般的に栽培されているのは、このセイヨウシャクナゲなのです。欧米で品種改良されたセイヨウシャクナゲは、見た目がとても綺麗で育てやすく、明治の末に渡来して園芸植物として広く育てられるようになりました。

 かつての神聖な花「高嶺の花」だったシャクナゲも今では庭木や鉢植えで手軽に楽しめるようになっているのは、このセイヨウシャクナゲのお陰なのです。

 もし、葉の両サイドが裏側に反り返って筒状になっているシャクナゲに出会うことが出来たら、聞いてみてください。「このまま忘れ去られても良いのですか。」「本来の日本固有のシャクナゲは、消え去っても良いのですか。」って・・・。

オールド・キャンパーの独り言

早期退職してJICAの海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン共和国 ラプラタ市の環境公園で1年すごした後、カンボジア教育青年・スポーツ省青少年総局で2年間を過ごしました。  海外生活の間に思い立って書き始めた「自然からのメッセージ」でしたが、帰国後、長野県の生坂村に引っ越して、自然の中で暮らし始めて、折に触れ読み返しているうちに「オールド・キャンパーの独り言」として書き直そうと思いたちました

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