藤の花

 藤の花は、万葉集にも歌われているように古くから日本人に愛されてきた花の一つです。強い日当たりを好むために蔓が木に巻き付いて木を覆ってしまいますが、そこから淡い紫色の花が房状に下がって咲く姿は、振り袖の着物を着た女性の姿に喩えられるほど艶やかなものです。

 藤棚は、公園や庭園などでよく見られる風景の一つですが、単にフジ呼ばれているのは、蔓が右巻きの「ノダフジ」のことだそうです。山でよく見られるのは、蔓が左巻きの「ヤマフジ」ですが、庭植え用には、白色系や八重品種など数多くの園芸品種が出回っているようです。

 以前は、山林の下刈りや間伐の時に木を育てるために、巻き付いた蔓を取り除いていたのでヤマフジは、あまり目立ちませんでしたが、最近は、山の手入れをする人が少なくなったために、ヤマフジの花が咲いている光景があちらこちらで見られるようになりました。

 さて、秀吉の軍師として有名な黒田官兵衛が、織田信長に対して謀反を起こし、籠城した荒木村重に捕らえられ土牢に幽閉されていた時に牢の鉄格子に巻き付いた藤の蔓が花を付けるのをみて「日のあたらぬ場所でも時が経てばこんなに美しい花を咲かせるではないか、自分も今の苦境の先に花を咲かせよう。」と誓ったという逸話がありますが、この逸話に出てくるフジは、土牢に生えていたということから、おそらくヤマフジだったのでは、ないかと思われます。

 また、芭蕉が詠んだ句「くたびれて宿かるころや藤の花」のフジの花は、詠んだとされる場所が大和八木(奈良県開原氏八木町)ということで、ノダフジの発祥の地(大阪市福島区野田)に近いのでおそらくノダフジだったのではないでしょうか。とは言っても官兵衛や芭蕉に「その藤は、蔓が右巻きでしたか。それとも左巻きでしたか。」と聞くわけにはいかないのですが・・・。

オールド・キャンパーの独り言

早期退職してJICAの海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン共和国 ラプラタ市の環境公園で1年すごした後、カンボジア教育青年・スポーツ省青少年総局で2年間を過ごしました。  海外生活の間に思い立って書き始めた「自然からのメッセージ」でしたが、帰国後、長野県の生坂村に引っ越して、自然の中で暮らし始めて、折に触れ読み返しているうちに「オールド・キャンパーの独り言」として書き直そうと思いたちました

0コメント

  • 1000 / 1000