ボダイジュ(菩提樹)

 お釈迦様が、その木の下で涅槃に入られたいう「沙羅双樹」。お釈迦様がその木の下でお生まれになったという「無憂樹」。お釈迦様がその木の下で座禅を組み、悟りを開いたといわれる「菩提樹」は、仏教三聖木とされています。

 そのボダイジュですが、臨済宗の開祖栄西上人が中国の天台山で禅を学んだ折りにそこに植えられていた「菩提樹」を持ち帰ったとされています。

 しかし、お釈迦様がその木の下で座禅を組み、悟りを開いたと言われる、いわゆる「菩提樹」は、クワ科の植物で中国原産のボダイジュとは別のものなのです。仏教がインドから中国に伝わった時に、インドのボダイジュと似た葉を持つ中国原産のシナノキ科の植物が「菩提樹」として伝わったのだと考えられています。

 また、「菩提樹」というとシューベルトの歌曲集にある「菩提樹」を思い出しますが、この歌に詠われている菩提樹は、ベルリン市にある「ウンター・デン・リンデン通り」の並木に使われているのと同じ木のことで、中国原産のボダイジュと非常によく似ているので、音楽家 堀内敬三は、シューベルトの歌曲集を翻訳するときに原題「Der Lindenbaum」を「菩提樹」と訳したのだそうです。植物名としては、セイヨウシナノキと呼ばれている植物です。

 話題をボダイジュに戻しましょう。お釈迦様が悟りを開いたとされるインドのブッダガヤのボダイジュが日本に紹介された時には、既に栄西上人が、ボダイジュとして日本に伝え、各地のお寺にもボダイジュとして植えられていたシナノキ科の植物があったために、本来のボダイジュには、インドボダイジュと言う和名がつけられました。

 本来、誤って伝えられたボダイジュが、そのままボダイジュとして認知され、本物のボダイジュは、インドボダイジュの名前に甘んじることとなったわけです。

 たとえそれが誤った情報だとしても早い時期に広まった情報を後から修正すると言うことは非常に難しいことなのですね。

オールド・キャンパーの独り言

早期退職してJICAの海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン共和国 ラプラタ市の環境公園で1年すごした後、カンボジア教育青年・スポーツ省青少年総局で2年間を過ごしました。  海外生活の間に思い立って書き始めた「自然からのメッセージ」でしたが、帰国後、長野県の生坂村に引っ越して、自然の中で暮らし始めて、折に触れ読み返しているうちに「オールド・キャンパーの独り言」として書き直そうと思いたちました

0コメント

  • 1000 / 1000