カシワ(柏)は、縁起物

  柏餅と聞くと西日本で育った私はサルトリイバラに包まれた柏餅をイメージしますが、

ここ長野県では柏餅は、本物のカシワの葉に包まれています。

  カシワと言う名前は、カシグハ(炊葉)に由来するという説が有力ですが、かしく(炊く)というのは、下面に小さな穴を開けた土器に木の葉を敷いて入れて、これを水の入った別の容器の上に載せて火にかけ、蒸し上げるという調理方法のことだったようです。

 この時に小さな穴から米などが落ちないように使われた葉のことが本来「炊葉」だったのです。その後、食べ物を盛る葉をカシワと呼ぶようになったようですが、宮中や春日大社などの神社では、今なお食物をお供えするときには、柏餅を作るカシワの葉に盛って供える習慣が残っているようです。

 その柏餅は、カシワの葉が「新芽が出るまで古い葉は落ちない」という性質を持っていることから家系が絶えない、子孫繁栄という縁起ものになって、端午の節句に柏餅を食べるという習慣は江戸時代に日本全国に広まったということです。

 また、このカシワの樹皮には、たくさんのタンニンが含まれているため、明治時代には、北洋漁業で使う網の染色や皮なめしに大量に使われることとなって富国強兵政策のもと外貨獲得に力を貸すようになったそうです。

 厚いコルク質の樹皮を持つカシワは、野火にも抵抗力があり、山火事のあとにも生き残ることができるため、自然発火が多かった北海道東部には、カシワだけが生き残り、カシワの大森林があったそうですが、その多くが、タンニン採集と開墾のために伐採されてしまったそうです。

 カシワの葉が手に入りにくいから代わりにサルトリイバラの葉を使ってでも、縁起物にあやかりたい日本人。外貨を獲得するためには、カシワの木を大量に伐採してしまう日本人。カシワの木は、いろいろな時代の日本人を見てきたようですね。

オールド・キャンパーの独り言

早期退職してJICAの海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン共和国 ラプラタ市の環境公園で1年すごした後、カンボジア教育青年・スポーツ省青少年総局で2年間を過ごしました。  海外生活の間に思い立って書き始めた「自然からのメッセージ」でしたが、帰国後、長野県の生坂村に引っ越して、自然の中で暮らし始めて、折に触れ読み返しているうちに「オールド・キャンパーの独り言」として書き直そうと思いたちました

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