勿忘草

    「わすれな草をあなたに」の歌で歌われて有名になったワスレナグサは、ヨーロッパでは古くから「誠実と友愛」の表象とされていて、いろいろな言い伝えが残されています。

 言い伝えでは、昔、ルドルフとベルタという恋人同士が暖かい春のタべ、ドナウ川のほとりを散策していた時に、ルドルフが恋人ベルタのためにこの花を摘もうとして、誤って川の流れに飲まれてしまいました。

 しかし、ルドルフは最後の力を振り絞って花を岸に投げ、「僕を忘れないで」と言う言葉を残して死んだのだそうです。残されたベルタは、ルドルフの墓にその花を供えて彼の最後の言葉をその花に付けたと言われています。

 また、スイスでは、若者がズボンのポケットにこの花を入れていくと若い娘に気に入られると言い伝えられているようですし、中部ドイツでは、偶然見つけたワスレナグサを左の脇の下に入れて家路をたどると、途中で出会った最初の人が、未来の配偶者の名を教えると言われているようです。

 伝説に出てくるワスレナグサは、花がサソリのしっぽのようにくるりと巻き込んだ穂状になる種類のようですが、現在は、園芸用に改良された数多くの種類があり、本来の地味な花はほとんど流通していないようです。

 日本には、同じ種類の花としてエゾムラサキと言う種類が自生していたようですが、現在では、ヨーロッパ原産の種類も園芸種が野生化したワスレナグサも、世界中に広く分布しているようです。

 昔、職場の大先輩から「青少年には、本物を見せろ。」と教わりましたが、現在では、野生化した園芸種もヨーロッパ原産の原種も日本原産のエゾムラサキもすべてが本物のワスレナグサと言うべきでどれも偽物ではない気がしています。

 何が本物で、何が偽物かを見分ける力こそが現在を生き抜く力なのかも知れません。

オールド・キャンパーの独り言

早期退職してJICAの海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン共和国 ラプラタ市の環境公園で1年すごした後、カンボジア教育青年・スポーツ省青少年総局で2年間を過ごしました。  海外生活の間に思い立って書き始めた「自然からのメッセージ」でしたが、帰国後、長野県の生坂村に引っ越して、自然の中で暮らし始めて、折に触れ読み返しているうちに「オールド・キャンパーの独り言」として書き直そうと思いたちました

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