自ら鎮痛剤を作る植物たち
歯を磨く習慣は、玄奘三蔵が仏典と一緒にインドから中国に持ち帰って、やがて日本に伝えられたと言うことです。
お釈迦様は菩提樹の木の枝を噛み砕いてブラシ状にして歯を磨くように勧めていたと言うことですので三蔵法師もインドでの修行中に歯を磨くことを知ったのだと思われます。同じようにモハメッドもイスラム教徒に「断食の間や祈りの前に必ずミスワクを使って息を綺麗にするように」と指導していたようです。このイスラム式歯ブラシとも言えるミスワクの原料は、サルドバラという木だそうです。
同じように歯ブラシとして使われている木は、パキスタンではピールウ、インドではニーム、アフリカではクルミ、日本ではヤナギだったそうですが、これらの植物に共通しているのは、噛むと口の中に苦味が広がり、この苦味に鎮痛、解熱、麻酔の効果があるというところです。
ヤナギの仲間の樹皮に鎮痛・解熱の効果があることは、古くから知られていたようで古代ギリシャのヒポクラテスがヤナギの樹皮を鎮痛や解熱のために使っていたと言われています。19世紀にはセイヨウシロヤナギの枝からサリチル酸が発見され、化学的に合成されるようになり、より副作用の少ないアセチルサリチル酸が合成され「アスピリン」として売り出されています。
最近の研究では、干ばつなどでストレスを受けたクルミの木が、大量のアスピリン化合物を放出して、ストレスによる自らのダメージを「癒やす」とともに、周囲の植物に警鐘を鳴らしている可能性もあるという発表もあったようです。
アメリカの国立大気研究センターのトーマス・カール氏は、「解熱剤のアスピリンを外部から取り入れなければならない人間と異なり、植物には自らアスピリンに似た化学物質を生成する能力がある。それによってタンパク質の生成を促して生化学的な自己防御能力を高め、傷を和らげるている。」と言っています。
ストレスから逃げ出すことの出来ない植物たちは、自らの力によって傷を和らげるとともに周囲の仲間に警告を発してアスピリンの製造を急がせ共に生きるという力を持っているようです。
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