山火事によって芽吹く森
キャンプ指導者の必要な知識の一つに自然への理解と環境保全の技術があります。ローインパクト・キャンプとかミニマムインパクト・キャンプと言う言葉が盛んに叫ばれた時代がありました。しかしやがてキャンプ場内においても指定された地域でしか火は使ってはいけないから焚き火は禁止という時代に変わってきました。今やキャンプのオーバーユースの時代になり、キャンプ用ガスやキャンプ用コンロによる炊事が主流になってきました。
自然保護の考え方から自然保全の考え方への転換が叫ばれた時代によく話題になったのが、1988年6月。アメリカ合衆国イエローストーン国立公園で山火事が発生した時に、アメリカ国立公園局(NPS)が、消火作業をしないように決定したという事件のことです。
その時、アメリカ国立公園局(NPA)は、イエローストーンの森の地層調査から、過去数回にわたって大きな山火事が発生しているという事実を知っていました。しかも、そのたびに、森林が消失して、草原になり、そして草原から再び森林へのというサイクルを繰り返してきたことを知っていたのです。
山火事を消火すると言うことは、この自然のサイクルを否定することにつながるとして、山火事を消火しないとの方針が出されたというのです。
山火事は、森林の病気を一掃します。また、焼けた木の栄養は土壌にしみこみ肥沃な土地となります。そのため、しばらくの回復期を過ぎると焼失した森は、やがて草原になり、草原が増えるとバイソン(アメリカ野牛)などの草食動物や小動物の数も増えてきて、やがて森林が育ち、森林が増えれば森の動物の数が増えるのです。
イエローストーン国立公園の森林の8割は針葉樹林帯で、主な樹木はロッジボールパインと呼ばれるマツ科の木だそうです。
このロッジボールパインは2種類の「松かさ」を持っています。ひと種類の「松かさ」は二年目には弾けて種をまきます。
しかし、注目すべきはもう一つの「松かさ」です。もう一つの「松かさ」は二十年近くも木にぶら下がっていて、周りの温度が113℃になると「松かさ」の松ヤニが溶けて、種を蒔くようになっているのだそうです。
ロッジボールパインは、「山火事」という緊急の状態に対応するため、山火事に遭わなければ種をまけない「松かさ」を作り、20年間も休眠させることによって森林が焼き尽くされた後に種がまかれ発芽を始める生活システムを作り上げて、非常事態に備えるているわけです。時と場合によっては、常識という名の無知が地球環境そのものを変えてしまっているのかも知れません。
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