「春の妖精」との出会い
雪解け直後に地上に顔を出して、すぐに花を咲かせますが、花はすぐに終わり、葉だけになり、夏までにはその葉も枯れて、地中部分だけが残り、そのまま越冬し、わずかな期間だけ地上に姿を見せ、「春の妖精」と呼ばれる植物があります。
「春のはかないもの」「春の短い命」という意味でスプリング・エフェメラルと呼ばれることもあります。
代表的な植物は、カタクリやフクジュソウ等ですが、古くから日本人に愛されお正月用の寄せ植え材料として栽培されてきたのが、フクジュソウです。江戸時代には、100を越える園芸品種があったそうですが、現在では多くが失われてしまっているそうです。
一昨年の3月にここ生坂村に引っ越してきて、土手にあるツツジの植え込みの中でフクジュソウを見つけました。藪の中に生えたフクジュソウは、寄せ植えの盆栽のイメージとは、かけ離れて背丈が高く、もし花が咲いていなければフクジュソウだとは気づかない状況でした。土手の草刈りをするために玄関前のツツジの下に植え替えていたのですが、今年は、まさに寄せ植えのフクジュソウのイメージどおりの花が咲きました。
フクジュソウの花は、パラボラアンテナのような形で日射しを中心部分に集めて空気を暖めて、受粉してくれる虫を誘っているのだそうです。
たとえ「短い命」と呼ばれたとしても、それは花をつけ日射しを浴びている時間のことで、夏までにしっかりと光合成をしてエネルギーを蓄え、また次の春には花を付けるフクジュソウにとっては、決して短い命ではないのだと思います。
もし、あの時、まるで大きなワラビの葉のようなフクジュソウに花が咲いていなければ、 もし、あの時、フクジュソウだと気づかなかったとしたら、解けかけたの雪の間から芽を出し、花を開く、現在のフクジュソウは、ここになかったと思うと「出会いの不思議」を感じざるを得ません。
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