綺麗なバラには棘がある
スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会のオープニング・セレモニーでの習近平主席のスピーチの中に「甘いウリは苦みを抱え、美しいナツメにはトゲが生える」という言葉がありました。「綺麗なバラには刺がある。」と言う格言は聞いたことがあるのですが、「美しいナツメには、棘が生える。」というのは、初めて聞きました。
中国では、バラよりもナツメの方が一般的なのでしょうか。
イギリスの地質学者ウイリアム・スミスの言葉に「美しいバラはトゲの上に咲く。悲しみのあとには必ず、喜びがある。」と言うのがあるそうですが、それ以外にもフランス人が好きな名文として「棘のないバラはない。」と言う言い回しもあるようです。
「綺麗なバラには刺がある。」と聞くと「綺麗な女性は、性格がきつい。」と言う意味合いだと思っていましたが、フランスでは、「誰にでも弱点があるけれど、良いところを見ましょう。」だとか「完璧な人間はいない。」だとか言う意味があるのだそうです。
大阪府高槻市にある大宅壮一顕彰碑には、「美しいバラの花は、野茨の根の上に咲く。」と言う大宅氏直筆の碑文があるそうです。雑草主義を唱え、野にあってあらゆるジャンルの評論を重ね、大衆に力を与え続けた大宅氏ならではの言葉のように思えます。
その大宅氏は、この言葉について「戦争中から戦後にかけて百姓仕事をしているうちにふと思いついた言葉である。地方で不完全な教育を受けたものが、都会に出てくると一時はかなわないと思うことがあっても、しばらくすると底力が出てきて、都会に生まれ、都会に育った者よりも、大きな仕事をする場合が多い。その代わり、いつのまにか、もとの野茨にかえってしまうこともある。(家の光1958年10月号所載)と述べているようです。
似たような言葉でも、使われる場面や使う人の意図によって様々な意味に変わっていくこともあるようです。
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