雪の中の宿り木
降り積もった雪の中をクロスカントリー・スキーでブナ林に入るとすっかり木の葉が落ちてしまった大木の梢に鳥の巣のような固まりが付いているのをよく見かけます。
これがヤドリギです。冬でも青々と葉を茂らせているので、木の葉が落ちた時期には、こんもりと丸くなった姿が、遠くからでもよく目立ちます。
地に根を張らずに樹上に寄生し、氷雪の中でも葉の緑を保っているヤドリギは、欧米では古くから、何か神聖なパワーがある特別な植物だと考えられていたようで、神秘的な伝統や習慣が広く言い伝えられているようです。
このヤドリギは、1年に一節だけ成長します。翌年はその先から二つ芽が出て更に成長します。これを繰り返して球状に成長するわけです。
「宿り木」の名が示すように大木にくっついた種が発芽して、その根を樹皮にくいこませて、宿主が根から吸い上げた水分や栄養分で生きていく、いわゆる寄生生活をしています。けれども、自分でも光合成をしているので、相手が枯れてしまうまで栄養を吸い尽くすようなことはしません。宿主を弱れせない程度に栄養分を奪いながら成長していくのです。そして、2~3月頃には、枝先の葉の間に淡黄色の小さな花をつけ、10月頃には実が熟して、冬でもその実が残っています。
雪の中でも残っているヤドリギの実は、野鳥たちの貴重な食糧となります。そして、ヤドリギの実を食べた鳥たちは、糞と一緒に種を撒き散らして、ヤドリギが新しい生命を育む手助けをしてくれているわけです。
ヤドリギの学名のViscumはラテン語の「とりもち」を語源とした言葉ということですが、ヤドリギの実には多量の粘液質が含まれていて、この実を食べた鳥が、糞と一緒に排泄するとこの粘液質も一緒に排泄されて、納豆のようにねばねばと糸を引き、木の枝にくっついてしまうのだそうです。
ヤドリギの花言葉は「困難に打ち克つ」「克服」「忍耐」だそうですが、周囲のすべての木々が落葉して、雪や氷の中で緑の葉を維持して実をつけているヤドリギの姿は、欧米の人たちには愛おしく思えたのかも知れません。
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