水中カメラマンからの警告
これもずいぶん前のことになりますが。NHKのテレビ番組でフリー水中写真家中村征夫氏の紹介がありました。
海の魅力と環境問題を伝え続けている彼が、30年間撮り続けている東京湾の水中写真の話に感激しました。
彼が、最初にお台場に潜った時には、東京湾は汚れていて視界もゼロに近かったそうです。そんな海の中で、マスクに何かが当たったので思わずシャッターを押した時の写真には、たくさんの卵を抱えた小さなカニが写っていたのだそうです。
汚れた海でもたくましく生きるカニの姿に感動した彼は、その後も何度か同じ海に潜ったのだそうです。そんなある日、「少しでも綺麗なところで産卵が出来、子孫を残すことが出来るように」という想いから、卵をいっぱい抱えたカニを数匹捕まえて、静岡まで運んで防波堤から海に投げ込んでやったのだと言います。しかし、防波堤からカニを投げ込んだ時に、彼はハッと気がついたのだそうです。「思いっきり投げ込まれたカニたちは、ポチャン、ポチャンと音を立てて海に落ちていったのだが、その音で集まった魚たちが、沈んでいくカニの卵を食べてしまったのではないのだろうか。自分は何という思い上がったことをしてしまったのだろうか。自然の摂理を無視した偽善者であったのだろうか」と・・・。
そして、その時から彼は、海に対する知識、生物に対する正しい知識なしでは、海に生きる生物の真実の生き様を撮ることは出来ないと考え、勉強を続けているのだということでした。
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