栴檀は双葉より芳し

  栴檀という木には、いろいろなエピソードがあります。念仏の功徳を説く仏教説話に「悪臭の非常に強い伊蘭(いらん)という木の林のなかに、たった1本の栴檀(せんだん)の木があって、その芽が成長してわずかに姿を現し始めるとその1本の栴檀の香りが伊蘭の林の悪臭をすべて良い香りに変えてしまう。」という話があるそうです。

 この話に出てくるインド産の栴檀と言う木は、日本では、白檀と呼ばれている香木のことで日本には生育していません。現在、日本で栴檀と呼ばれている木は、古くは「あふち」と呼ばれていたようです。

 「あふち」の木は、春に花が咲き秋には実が鈴なりに、千個の団子のようにぶら下がることから「千団子」とも呼ばれていたようです。滋賀県大津市にある天台宗の総本山三井寺では、毎年5月に開かれる「千団子祭(護法善神堂縁日)」には、千個の団子が供えられるそうですが、千個の団子と植物の「千団子」の語呂合わせから「栴檀」と表記したことから「あふち」が栴檀と呼ばれてしまうようになったのだと言う説もあるようですが、定かではありません。

 ところで「栴檀は双葉より芳し」という言葉ですが、大成する人は幼少のときから優れているという喩えとして使われてきたようですが、実は、インド産の栴檀(白檀)は、幹の中心部の心材と呼ばれる部分は、強い香りを放ちますが、周辺の部分では、白檀の香りはしないようです。もちろん芽生えの時にも臭いはいっさいしないと言うことです。

 インドの仏教教典の中に「栴檀は双葉の頃には香りがないが、成長して大きな木になると香気が出る。」とあるのが日本に伝わるまでに「栴檀は双葉より芳し」に変わってしまったのではないかと考えられます。

 「栴檀は、双葉より芳し」の栴檀は、実は、栴檀のことではなくて白檀のこと。白檀は双葉の頃には芳香はしないのです。

 人の話は、話が広がっていくたびに少しずつ変化してしまうものなのですね。特に例え話は、使う人、使う場所、使い方によって誤解を招くことが多いので気をつけねばなりませんね。

オールド・キャンパーの独り言

早期退職してJICAの海外シニアボランテイアとしてアルゼンチン共和国 ラプラタ市の環境公園で1年すごした後、カンボジア教育青年・スポーツ省青少年総局で2年間を過ごしました。  海外生活の間に思い立って書き始めた「自然からのメッセージ」でしたが、帰国後、長野県の生坂村に引っ越して、自然の中で暮らし始めて、折に触れ読み返しているうちに「オールド・キャンパーの独り言」として書き直そうと思いたちました

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